針穴日記

見たり聞いたり思ったりしたことなどをちらほらと。

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また『ポンペイ最後の日』

ポンペイ最後の日 改訂新版 (少年少女世界の名作 6)img301.jpg

今度は偕成社の児童書で、リットン卿の『ポンペイ最後の日』を読んだ。
これも絶版。訳は柴田錬三郎だ。

翻訳というよりも翻案というかんじで、けっこう自由に話をいじってあるようだ。
人物関係や話全体がわかりやすく改変してあって、以前読んだ講談社や中央出版の訳よりも娯楽要素が強く、メリハリがあるので、すっと頭に入る。
この本には完訳も有名な決定訳もないようだし、これは子供向けの本なので、こういう脚色もありだなと思える。

主人公グローカスは裕福な貴族であるばかりではなく、この訳では《ローマ一の剣士》というふれこみだ。アクションの場面がいろいろ派手になっていた。
極めつけは、なんと5、6人の刺客(本職のグラディエーターたち)を、たった一人で、しかも相手が死なない程度に手加減して倒しちゃったりする。このあたりの描写は、あまりにも剣豪小説風なので、おそらく柴錬の創作なのだろう。

キャラクターの恋愛感情が薄いのも、この訳の特徴。
怪僧アーバシズがアイオンに向ける邪な欲情もなければ、グローカスと美女アイオンの関係も、恋愛ではない。となると、盲目の少女ニディアがグローカスを慕う気持ちも描写されないので、彼女の中にアイオンへの嫉妬心がうずまく箇所はすべて割愛されている。
ニディアが惚れ薬を使うくだりも、《自分の目が見えるようになる薬》に変更されている。児童ものなので、そのほうがいいと判断したのか。
でもそのおかげで、最後のとても印象深いシーンは変更されている。
うーん、もったいない。

クライマックスのヴェスヴィオ山噴火のあとは、少々あわただしく終わってしまったのが残念だ。

読んだのは1989年の改訂版5刷なのだが、この本にも誤植がけっこう多いのが気になった。
児童書の出版社なら、もうちょっと気を使ってほしい。
  1. 2010/08/13(金) 14:06:40|
  2. 読書
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